再犯をめぐる状況
我が国の犯罪情勢は、刑法犯の認知件数が平成27年以降、令和3年まで戦後最少を更新し続け、令和4年にはやや増加に転じたものの、全体としては比較的安定した状況にありますが、検挙人員の約半数を再犯者が占めているなど、安全安心な地域社会を実現する上で、再犯防止対策の充実が重要な課題になっています。
刑法犯 検挙人員中の再犯者人員・再犯者率の推移
法務省が行った「受刑者に対する釈放時アンケート」(令和2年度分)によれば、「もう二度と犯罪はしない」と回答した人は84.9%、「出所後はきちんと仕事をして規則正しい生活を送りたい」と回答した人は77.8%に上ります。しかしながら、実際には、刑務所から出所しても、出所後5年以内で3人に1人が、10年以内では半数近くが刑務所に戻っています。
出所受刑者の出所事由別再入率
再犯に至る理由は様々ですが、「住むところがない、仕事がない」「高齢である、障害がある」「孤独、相談相手がいない」といったことが立ち直りの壁になり、再犯に至っている人が少なくありません。
例えば、帰るべき場所がない刑務所出所者と更生保護施設等への仮釈放者とでは出所後2年以内に再び刑務所に戻ってしまう人の比率に約1.8倍の差があります。
住居の有無別の刑務所出所者の
2年以内再入率
また、就労についても、保護観察対象者の再犯率は、無職者は有職者の約2.6倍に上ることが明らかになっています。
職業の有無別の
保護観察対象者の再犯率
(法務省保護局の調査による)
「出所受刑者の出所事由別再入率」のグラフに示されているとおり、受刑者の再入率は、保護司等による指導や支援が行われる仮釈放者と、それらが行われない満期釈放者とでは大きな差があります。
再犯防止対策の推進のためには、保護司制度をはじめとする更生保護の更なる充実が不可欠であるといえます。
政府が進める再犯防止対策について、詳しく知りたい人はこちらを御覧ください。
保護司の現況
保護司の定数は、保護司法で全国52,500人と定められています。
実人員は、近年、減少傾向を示しています。高齢化も進んでおり、60歳以上の者が全体の8割を占め、平均年齢は65.6歳となっています。
このため、法務省保護局及び全国保護司連盟では、平成31年3月に「保護司の安定的確保に関する基本的指針(改訂版)」を定めたほか、令和2年2月には「保護司の適任者確保のための緊急行動宣言」を発出し、保護司の適任者の確保に取り組んでいます。また、令和5年5月には法務省に「持続可能な保護司制度の確立に向けた検討会」が設けられ、外部の有識者を交えた協議が進められています。
法務省:持続可能な保護司制度の確立に向けた検討会(moj.go.jp)
保護司の任期は2年ですが、大半の方は再任を重ねて長年保護司としての活動を続けられます。これまでは76歳を超えると再任しないとされていたところ、令和3年度からは、少なくとも78歳までは活動が続けられるよう再任の運用が変わりました(特例再任)。令和4年以降の保護司数には、特例再任による保護司数を内数で表示しています。
また、女性の比率は現在26.7%であり、徐々にではありますが、上昇傾向にあります。
なお、数字は法務省保護局によるもので、各年とも1月1日現在のものです。