犯罪や非行をして刑務所や少年院に入った人も、いずれ社会に戻ってきます。
しかし、中には、頼るべき親族などや帰る場所がなく、同じ過ちを繰り返してしまう人もいます。
このような人たちを保護し支援して、その再出発を支える施設が「更生保護施設」です。
元来、更生保護施設は、犯罪非行をした人たちの社会的経済的な自立を支援することを主な目的としてきました。
しかし、昨今の社会情勢の変化に伴い、たとえば、情緒的な問題を抱えている人、高齢や障害などで社会に適応することが難しい人が増えてきました。
そのため、最近では、欧米で研究・開発された教育プログラムを導入し、あるいは、社会福祉士・臨床心理士などを職員として採用するなど、処遇の専門施設として変化を遂げてきています。
現在、全国に102の更生保護施設があります。 すべて民間団体である更生保護法人、社会福祉法人、NPO法人、社団法人によって運営されています。 その多くは、成人男性を保護の対象としていますが、女性や少年だけを保護の対象としている施設もあります。
更生保護施設誕生の歴史には、ある悲しい出来事がありました。
明治20年、場所は静岡。
監獄から釈放された一人の男性がいました。
かつては、あらゆる罪を重ねた男も、監獄職員たちの熱心な指導に心を入れ替え真人間になることを誓って監獄を後にしました。
しかし、10年ぶりに家に戻ると、妻は別の男性と暮らしていました。
やむなく親戚を頼ったものの追い返され、ついには宿なしの身になってしまいました。
せっかく更生を誓ったというのに、親族からも見放された男は、絶望して自らの命を絶ってしまったといいます。
その話を聞いた一人の実業家「金原 明善」が地域の協力を募り、明治21年には、監獄から釈放された人を保護する施設を作りました。
それが「更生保護施設」の始まりです。